北京五輪:トラブル
「北京五輪」いらだつ欧米…開催国中国に品位問う
8月8日の開幕まで半年を切った「北京五輪」の開催国中国に、欧米がいらだちを強めている。言論や人権の弾圧など欧米がアレルギーを示す敏感な問題で、中国当局の対応が遅々として進まないためだ。米映画監督スティーブン・スピルバーグ氏による五輪の芸術顧問辞退は象徴的な意味をもつ。米下院でナチス主導の1936年「ベルリン五輪」を引き合いに、ボイコットをちらつかせる動きもある。五輪成否は胡錦濤政権の根幹も揺るがしかねない。
北京五輪の成功で中国は、大国としての存在感を国際社会に誇示する一方、国内向けには国家意識と連帯感の高揚を狙っていた。同時に昨年秋の党大会を経て2期目に入った胡政権として、江沢民前国家主席に連なる上海閥の影響力を断ち切って、安定的な経済成長に舵を切る内政上のテコとしても期待していた。
しかし、原油調達を目的とした資源外交を進める中国は、ダルフール問題を抱えるスーダンなどアフリカへに資金支援を拡大。人権団体や欧米の議会などから批判が続出した。米下院では「中国政府が人権侵害をやめない場合は北京五輪をボイコットする」との決議案が提出されており、同時に「ベルリン五輪」を引き合いに、「開催国の品位」が問題にされた。
中国側は「五輪の政治問題化は許されない」との主張を、いわば唯一の論拠に反論してきた。とはいえ、国際的な映画監督スピルバーグ氏を起用し、マスコットやテーマソングを世界から公募するなど、「世界が北京五輪を支持している」というイメージ戦略のもくろみが崩れ、中国人の「メンツ」もつぶされたことで、次の一手が見えにくくなったのも事実だ。
チベット問題や、ウイグル独立派、人権活動家の弾圧、台湾統一工作問題など、五輪が近づくにつれ世界から中国に注がれる視線は一段と厳しさを増す。市場経済化は急進展したとはいえ、共産党一党支配体制を堅持する中国で顕在化する矛盾は、とりわけ人権問題に敏感な欧米から「北京五輪の開催は早すぎた」とみられる根拠になる。
北京五輪に威信をかけた胡政権がどう事態を収拾するか。政治的な角度からも北京五輪への関心度は日に日に強まる。